21年前(6)
この内容は、昨年1月にメーリングリストで連載したものです。
さて、湿っぽい話がつづいたところで、最後にちょっとした面白い話もしておこうと思います。
○チョコレート事件
友人の避難先に、アメリカ軍がテントなどの設営に来てくれたそうです。
それをみた友人が、冗談まじりにこう叫びました。
「ギブミー、チョコレート!」
そしたら、気のいい黒人の軍人さんが
「オーケイ、ボーイズ」
といって、本当にチョコレートをくれたそうです。
それをおじいちゃんのところに持っていったら、
「これは昔、進駐軍からもらったのと同じチョコレートや、なつかしなぁ。」
といって、チョコをほおばっていたそうな。
ちなみに、この黒人の軍人さん、あとで上官に怒られていたそうです。
かわいそうにねぇ。
○お風呂事件
その日、朝から出張なので、朝風呂に入っていたそうです。
湯船につかっているときに地震に遭い、家は全壊。
しかし、本人は湯船にいたから助かったそうで。
でも、ここからが大変。
湯船からは一歩も出る事ができず、お湯の温度はどんどん下がり、しかも自分は素っ裸!
救助されたのは7時間後。
低体温症で死にかかったそうです。
よかったのか、悪かったのか。
○改造車がいっぱい
信号に電気が通じていない神戸の街
ある意味で無法地帯です。
でも、皆が譲り合い、事故は起きず。
その中で、時々目にする車が。
オープンカーになってしまった日産シーマ。
ガラスが一枚もないワゴン。
トランクがむき出しの乗用車。
ドアのない車。
屋根のないワンボックス。
まあよく走りますよねぇ。
○簀巻き事件
友人の街では、泥棒に備えて自警団を結成し、夜な夜な巡回していました。
そしたら、ばったりと泥棒に出くわし、大格闘になったそうです。
泥棒は友人に簀巻きにされ、電柱に吊るされた状態で警察に引き渡されたそうです。
友人も顔に怪我を負い、私が
「顔、どないしたん」
と聞いたら教えてくれました。
○スキーウエア事件
友人はいつも、下着で寝る習慣がありました。
地震のときも下着で寝ていて、地震後、家の外に出ようとして、着るものを探したそうです。
そしたら、来週いく予定で用意していたスキーウエアが手元に。
迷わずそれを来て、外に飛び出します。
そしたらそのまま近所の人の救助や火事の消火を手伝い、ふと気がついたら自分だけ汗だくの状態に。
そりゃそうでしょう。
なんたってスキーウエアですから。
急に恥ずかしくなった友人は、家に戻り普通の服に着替えたとか。
ちなみにこの友人、ギブミーチョコの友人です。
○漫画事件
同僚が住んでいたアパートですが、隣の部屋がエロ漫画家のアシスタントさんだったらしく。
まあエロ漫画が散乱していたそうです。
財産をがれきから取り出そうとしても、散乱しているエロ漫画に目がいってしまう。
独身男性の悲しい性です。
手伝いにきた別の同僚も、これまた独身。
作業は全然進まず。
結局、一日仕事になったそうです。
同じく、全壊した中古ビデオ屋さんがアダルトビデオを路上に野積みして
「ご自由にお持ちください」
なぜでしょうねぇ。
持って帰る気にならないのは。
他にも、全壊した古書店の前には本が、雑貨屋の前にはぬいぐるみが積まれていて
「ご自由にお持ちください」の札が。
避難所にいる人たちの心の安らぎに、少しでも役に立てたんでしょうねぇ。
アダルトビデオ以外はね(笑)
○おまけ
震災一年後、持病で倒れ入院したのですが、その病室でのお話です。
もちろん全員が被災者ですから、自然と震災の話になります。
ある男性は、アパートの一階が倒壊し、そこから10人ほど助け出したと。
そして、半分はなくなっていたと。
そんな話をしながらも、みんな明るく話すんですよね。
関西人の気質でしょうか。
話している内容はすごく重いのに、直接話を聞くと、それこそ相手の笑いを取ろうとする。
サービス精神が旺盛なんですよね。
私もそうありたいと思いますが、本来の性格が性格ですから、なかなかそうできない面もあります。
皆さんには長い間、私の話におつきあいいただきました。
あれから、21年という月日が流れました。
どうか、私からのお願いです。
今を一生懸命生きている、阪神大震災以外の人たちも含めた、すべての災害の被災者や遺族のために、
ほんの少しでもいいので
祈ってあげてください。
癒える事のない傷を抱えている人もいるでしょうし、忘れようと努力している人もいる。
でも、皆今を一生懸命生きています。
その人たちに
エールを送ってください。
勝手なお願いで申し訳ありません。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
コメントをお書きください